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設定の簡単さを中心にした利便性を比較する。 | ||||||||||||||||||||||||
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(1) ラベル管理の簡単さ SELinuxのTEでは,ファイルとプロセスにそれぞれタイプとドメインを付与(これを「ラベル付け」と呼ぶ)してから,ドメインとタイプに関するアクセス制御を設定する。LIDSの場合は,プロセスの実行ファイル名と,ファイルのパスを直接指定してアクセス制御を設定する。LIDSでは,そもそもラベル付けが必要ないのでより簡単にアクセス制御の設定が行える。 例えば,「Apache HTTP Server(以下Apache,/usr/sbin/httpd)が,Webページ(/var/www/html)を読み込み可能」という設定を行う場合,SELinuxでは,タイプやドメインを付与してから,アクセス制御を記述するため,下記の(1)〜(3)のような複数の設定を記述する必要がある。一方,LIDSの場合は,(4)のように記述するだけで済む。
(2) 設定項目の簡単さ アクセス制御のきめ細かさの比較で解説したように,SELinuxではリソース種別やパーミッションの数が豊富である。その反面,設定項目の種類が多くなり,設定作業が煩雑になりがちである*1。 アクセス制御に優れるSELinuxと使いやすいLIDS
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比較項目 | SELinux | LIDS | |
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セキュリティ | アクセス制御の細かさ(粒度) |
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ユーザーごとのアクセス制御 |
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権限昇格制御 |
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監査ログ |
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使いやすさ | ラベル管理の簡単さ |
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設定項目の簡単さ |
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ただし,サポート・サービスが必要なシステムでは当面,SELinuxを導入した方が良いと思われる。レッドハットやターボリナックスは,それぞれのサーバー・ディストリビューション(Red Hat Enterprise Linux,Turbolinux Enterprise Server)にSELinuxを組み込むことを発表済みである。また,ノベルも自社のディストリビューション(SUSE Linux Enterprise Server)でのSELinuxのサポートを進めているようだ。
これらのディストリビューションを利用すれば(SELinuxの設定や運用管理を含んだ)サポート・サービスが期待できる。
また,日立ソフトウェアエンジニアリング(以下,日立ソフト)のようにSELinuxのサポート・サービスを開始したSIベンダーや,日本高信頼性システムのようにSELinuxの教育サービスを開始したセキュアOSベンダーも登場している。
さらに,日立ソフトのSELinux関連ツールの開発やNTTデータによるSELinuxの機能拡張,日本総研によるログ監査強化機能の開発など,企業の研究開発も活発である。
一方LIDSでは,今のところ,こうしたサービスは見当たらない。こうしたことから,少なくとも当面は,サポート・サービスが必要なシステムにおいてはSELinuxを選択した方が無難だろう。
SELinux入門は今回が最終回である。SELinuxもLIDSもまだ完成されたソフトではなく,改善の余地はまだまだ存在する。お互いの良いところを取り込みながら,改良されていくことを期待する。また,フリーソフトでは特に,ユーザーの要望により改良される場合が多いものである。本連載をきっかけにSELinuxやLIDSを試された際には,是非その結果をユーザーの声としてコミュニティに反映していただければ幸いである。